本書は、私が美容室の経営コンサルタントとしての活動を始めて5年目を迎えた2006年1月に、それまでの活動内容を一冊の「小冊子」としてまとめ、初めて世に出した処女作。
で、時代が大きく変化していく中、初版発行から10年以上が経った今もなお、「美容室経営のバイブル」として多くの方々にご愛読いただいている「繁盛の指南書」です。
今回、原文の一部に加筆・修正を加え、バージョンアップした内容でお届けします。
つたない文章ですが、ぜひ最後までお付き合いください。
あなたのサロンの繁盛実現の一助となれば何よりです。
はじめに
「落ちてしまった売上が戻らない」
「いくらキャンペーンをしても効果はいまいち」
「スタッフがなかなか育たない」
「先が見えない」
「何から手をつけていいのか分からない」
これらの声は、今多くのサロン経営者が抱える共通の悩みです。
そういった方々のタメ息や苦悩の声が、私のところへたくさん集まってきます。
この小冊子をお読みいただいているあなたにも、共感できることではないでしょうか。
私は、美容サロンを対象に、経営のコンサルティングを行っています。
私のコンサルティングスタイルは、「先生」と呼ばれ、幹部を相手に、会議室でパソコンを前に難しい顔で講義を行う・・・、そんな従来からの、きっとあなたがイメージする「コンサルタント」とは、少しかけ離れたものだろうと思います。
では、どんなやり方で、繁盛の実現をお手伝いしているのか!?
それは、これから先を読んでいただくことで、徐々にお分かりいただけると思います。
これまで私がお付き合いしてきた中で、カタチはさまざまですが、成果がまったく上がらない、といったようなサロンは一件もありません。
といっても、取り立てて特別なことをしているわけではないのです。
繁盛を実現するうえで、しなければならない当たり前のことを、筋道を立てて行う。
あなたのやるべきことを明確にし、理想とする姿を手にしていただくお手伝いをしているのです。
では、その「しなければならないこと」とは!?
そのことを、今から具体的にしっかりとお話ししていきたいと思います。
この小冊子を読み終えたとき、あなたの抱える悩みの多くは、確実に解決の方向へと向かっているはずです。
今、サロン経営にお悩みのあなた。
お客様のお役に立つための努力を惜しまず、スタッフの成長を心から望んでいるあなたが、繁盛を実現できないわけがありません。
ほんの少しの気づきと行動が、あなたのサロンの現状を大きく変えることでしょう。
もくじ
第1章 どうして儲からなくなったのか?
お客様はどこへ行った
1998年をピークとする空前の美容ブームがありました。
あの、「カリスマ美容師」が話題になった時代です。
テレビや雑誌でじゃんじゃん「美容師」「美容サロン」が取り上げられ、キムタクが美容師役をやったドラマも大人気でした。
この頃は、特に何の努力をしなくてもお客様は来られ、広告を出せば多くの新規客が集まり、店を出せば儲かる。
そんな右肩上がりの経営環境でした。
ところが、このブームも2000年には終息し、10年が経った今はどうでしょう。
「いったい、あのお客様はどこへ行った!?」と嘆きたくなるほど、どのサロンもお客様の数が激減しているのです。
売上=来客数(お客様の数×来店頻度)×客単価 ですから、来客数が減れば売上げが激減するのは当然です。
本来、来るはずだったお客様が来ない。
つまり、あるはずだった売上げが消えてしまった!のです。
では、なぜ、お客様が来なくなってしまったのでしょうか?
「世の中の景気が悪いから・・・」
「近くに低価格サロンができたから・・・」
「周りに美容室が増えたから・・・」
「若いスタッフの技術力が足りないから・・・」
「ベテランスタイリストが辞めたから・・・」
多くのサロン経営者からは、よくこのような答えが返ってきます。
でも、お客様が減った真の理由は、本当にそうなのでしょうか。
少し違う角度から見てみましょう。
お客様は何を求めているのか
お客様は今、どのようなサロンを選んでいると思われますか?
違う言い方をすると、お客様はサロンにどのような価値を求めていると思われますか?
以前は、特殊な技術や流行のスタイルにしてくれる、いい腕を持った美容師のいるサロンに人は集まりました。
美容師本来の技術力を試された時代です。
それがやがて、材料や器具の進歩、情報のスピード化、そして何より美容師それぞれのトレーニングの成果もあって、技術面での大きな格差がなくなりました。
すると、長く続いた「技術競争」の時代は終わり、次に「オマケ競争」の時代へと移っていきました。
ここでいう「オマケ」とは、たとえば大きなガラス張りの素敵な空間であったり、壁に並ぶおしゃれな洋書や雑誌であったり、キャンディやドリンクのサービスであったり、あるいは、イケメンのスタッフを揃える(笑)ことかも知れません。
つまり、サロンを引き立てるパッケージを美しく整えて、プラスの付加価値を付けることで、他店との違いを打ち出しました。
これが「オマケ競争」の時代です。
ところが、どのサロンも、この「プラスのオマケ」を付け始めると、またまた差別化が困難になっていきました。
ローカルな住宅街にも、大きな駅前にも、同じような外観のサロンが乱立し、お客様の目からすると違いがよく分からなくなり、一つひとつのモノが特別なものではなくなってしまいました。
そこで登場するのが、オマケはおまけでも「マイナスのオマケ」。
要は、「値引き」です。
どこに行っても同じような店構えやサービスしかなければ、安いほうがいい。
ここで各サロンは、「マイナスのオマケ」を競って付け始めました。
さまざまな値引きキャンペーンもその一環です。
こうして「モノ」をめぐる競争は、技術力からパッケージへと進み、値引き競争で最終的な段階に突入していったのです。
まさに価格破壊の時代です。
わたしの心を満たして
ところが、、、
サロンブームが下降期に入った2000年頃、それと重なるように、お客様の購買に対する価値基準が大きく変化していきました。
「モノから心へ」というフレーズを、よく耳にされたのではないでしょうか。
そう、まさにその時代の到来です。
人はみな、「幸せになりたい」「豊かになりたい」という欲求を本質的に持っています。
その欲求を満たしてくれるものは、かつては「モノ」でした。
人と同じモノが欲しい、人よりいいモノが欲しい、人と違うモノが欲しい、自分らしさを表現できるモノが欲しい、、、
そんなことから、物質としての「モノ」が売れた時代でした。
サロンでいうと、「素敵なヘアスタイル(を表現する技術力)」であり、「おしゃれでかっこいい店舗」であり、「キャンディやドリンクのサービス」「さまざまな割引チケット」でした。
では、「モノから心へ」の「心」とは、どういうものなのでしょうか?
お客様は、「目には見えないものだけど、『心の満足』を得たい!」と思っています。
『心の満足』といっても、
「でき上がりに差がないなら、安いほうが満足するんじゃないの?」
「おしゃれなサロンをつくることやサービスを増やすことが、顧客満足じゃないの?」
と思われるかも知れません。
しかしながら、今を生きるクレバーな女性たちの欲求は、これまで経験してきたさまざまな消費活動の中で、モノを所有することで満足感を得るということから、そのモノを通して「感動的な体験」を得たい、ということに変わっているのです。
この、「感動的な体験」こそが『心の満足』なのです。
「じゃあ、美容室でお客様に『感動的な体験』を提供するなんて、いったいどうすればいいの?そんなことってできるの?」
・・・そう思われたあなた。
もっともな疑問です。
もちろん感動といっても、「映画を観て、感動してボロボロ泣いた」とか、「友人の結婚式に列席して、感動で胸がいっぱい」とか、「100万ドルの夜景を目の前に、感動して鳥肌が立った」とか、そういう大きな気持の揺れとか、涙が出る思いとか、そこまでのものである必要はありません。
もっと身近なものです。
たとえば、、、
多くのサロンでパーマやカラーの待ち時間に、ドリンクのサービスをしていますが、
「○○様、コーヒーになさいますか?それとも紅茶?」とお声がけしていたのが、これまでのやり方です。
それを、
「○○様、コーヒーをお持ちしますが、確かコーヒーに砂糖は要らなかったんですよね」というお声がけができればどうでしょう。
お客様の反応は、
「わたしのこと、よく知ってくれているんだ!そんな細かいところまで覚えてくれていたの」という、ちょっとした驚き、嬉しさが心にもたらされますよね。
この、「ちょっとした驚き、嬉しさ」が、お客様の「感動的な体験」となって『心の満足』を得るのです。
感動とは、期待を超える体験をしたときに生まれる心の状態です。
「技術競争」から「オマケ競争」へ。
そして今こそ、「感動競争」の時代なのです。
お客様の購買に対する価値基準が、「モノ」から「心」へと大きく変化しているのですから、いくら頑張って値引きをしても、残念ながら効果は薄いということがお分かりですよね。
感動を生み出すカウンセリングトーク
コーヒーを頼んでコーヒーが出てきた。
それだけでは自動販売機と同じです。
自動販売機では、コーヒー以外のものはお釣りぐらいしか出てきません。
こんな自動販売機のような接客から脱し、お客様に『心の満足』を提供するには、どうしたらいいのでしょう。
美容室でよくあるカウンセリングの一場面です。
たとえば、、、
来週、彼氏とのデートのためにサロンに来られたお客様(A)がいます。
そして、スタイリスト(B)が担当します。
B 「いらっしゃいませ。今日はどうされますか?」
A 「え~っと・・・、カットでお願いします。」
B 「はい、分かりました。カットですね。どんな感じがいいですか?」
A 「はぁ・・・、まぁ・・・、じゃあ、まとめやすい感じで・・・」
B 「分かりました!」
さて、この接客のどこがよくないのでしょう。
「ウチでも、普通こうよ」とおっしゃるあなた。
では、こう考えてみましょう。
お客様は、いったい何を買いにサロンに来られたのか?
「カットでしょ」という答えは、ブーッ!!
正しくは、カットという商品を通して得られる『感動的な体験』です。
デートを控えたAさんは、「カットをしてキレイになったわたし」。
そして「彼とキレイなわたしの楽しいデート」をイメージして椅子に座られているのです。
Aさんは、本当はこう言いたかったのかも知れません。
「来週、彼と海にデートに行くの。彼はフェミニンな感じが好きだけど、海だから巻き髪をキープするのも難しいし、でもキレイなわたしを見せたいし、髪を何とかしてもらって素敵なわたしになって、彼と楽しく過ごしたいの」と。
でも、いざサロンの椅子に座って、スタイリストに、「どうされますか?」って訊かれても、開口一番、「あのね、来週海に行くんだけど、彼はね・・・」とは切り出せませんよね。
「カットでまとめやすく」と言うのがせいぜい。
手に入れたいものがあるにも関わらず、お客様はそのイメージを具体的に伝えることができないのです。
それで結局、「カット」と言ってしまうのですが、これは「単なる商品名」であって、お客様が本当に手に入れたいものではないのです。
「じゃあ、どうすればいいの?」という声が聞こえてきそうですね。
まずは、お客様の来店理由を知ること。
「どうして○○(この場合は、カット)なのか!?」を訊くことです。
「どうして?」と尋ねられたら、お客様は、
「(なぜなら)~のようになりたいの。今の~に悩んでいるの」というふうに、サロンに来た理由(=手に入れたいもの)をスタイリストに話すことができるでしょ。
それが、お客様の『心の満足=感動的な体験』への第一歩なのです。
では改めて、前のカウンセリングに挑戦してみましょう。
B 「いらっしゃいませ。今日はカットとお伺いしていますが、どうしてカットなんですか?」
A 「実はね、来週デートで海に行くんだけど、今のままじゃあ、髪がまとまりにくくて~」
B 「いいですねぇ。来週、彼氏さんと海にデートですか。それで、髪をまとめやすくしたいんですね。分かりました!じゃあ、~」
あとはスタイリストの、腕のみせどころ。
まとまりやすいポイントパーマや夏の海に映えるカラーリングを提案することができるかも知れません。
素敵なシニヨンの作り方をお教えできるかも知れませんし、夏の日差しに髪の傷みが目立つようならトリートメントをおすすめして、楽しい素敵なデートをお手伝いできるかも知れません。
「分かってくれる」「共感できる」「気づきや発見がある」
・・・そんな人と付き合いたい。そんな人から買いたい。
考えてみれば、至極当たり前のことです。
繰り返しますが、今やお客様は、サロンにカットやカラーなどといった「単なる商品」を買いに来られているのではありません。
その商品やサービスを通して得られる『感動的な体験』という、目には見えない「心の満足」を求めているのです。
失客の原因は、お客様が、自分の求めているものをそのサロンでは上手く手に入れることができないから。サロンに行く理由が見つからないからです。
高いお金を出して『心の満足』が得られないのなら、最近街でよく見かける、1,000円カット、2,000円カットといった低価格サロンのほうがいい、ということになりますよね。
実際、この手のサロンは、安くて早いでという理由で、最近では若い女性客がずいぶん増えているようです。
女性たちの中で、サロンに対する価値が下がっている。
これは大変悲しい現実です。
豊かで幸せな気持ちにしてくれる場所として、女性たちはもう、サロンに期待しなくなっているのかも知れません。
あなたのサロンは、お客様が「行きたくなる場所」ですか?
ご自身のサロンの現状を、今一度きちんと見直してみる必要があるのではないでしょうか。。。
第2章 私がこの小冊子を書いた理由
ここでは、少し私自身の話をしてみようと思います。
せっかくこの小冊子を手にしていただいているあなたに、自己紹介の意味も含めて、少しだけお付き合いくだされば嬉しいです。
夢の実現
私は、大学卒業後、1989年4月に、大阪リクルート企画(現、リクルートホールディングス)に入社しました。
学生の頃から、将来の夢は「社長」になることでした。
その夢を胸に、仕事を懸命にしました。
自分で言うのは少し恥ずかしいですが、サラリーマン時代の営業成績は常にトップクラスでした。
ですから、独立しても充分上手くやっていけると確信していました。
約6年間のサラリーマン生活を経て、1995年1月、28歳のとき、ついに!家庭教師派遣業としてヒューマンサポートを創業。
念願の「社長」、憧れの「青年実業家」として、意気揚々とスタートを切ったのです。
数年後の自分を想像すると、ワクワクしてなりませんでした。
しかし、そんな日々は長くは続きませんでした。
思うように業績は伸びず、一向に儲からないのです。
厳しい現実と戦う日々が始まりました。
一生懸命やってるはずなのに・・・、どうしても事業が軌道に乗らないのです。
昼は社長、夜はコンビニ店員
創業して3年くらい経った頃、とうとう資金も底をつき、どうしようもなく深夜のコンビニでアルバイトを始めました。
家族を支えるためには、やむを得ませんでした。
会社で仕事を終えてからコンビニに入り、明け方まで働き、少し寝てまた会社へ。
そんな暮らしが、結局1年半続きました。
「やりかけたことを途中で諦めたくない!」
そんな気持ちで、必至に事業とアルバイトを両立させていました。
会社経営という学生の頃からの夢を、簡単に捨てることはできませんでした。
バイトで何とか事業を継続させながら、いつも頭の中は、「もっと儲かる方法はないのか?」「何か他にできることはないのか?」と悶々としたり、「儲からないのは頑張りが足りないからだ」と自分を責めたりしていました。
ある日、深夜のコンビニで、雑誌の棚を整理しながら求人誌を見ていました。
景気のいい業界ほど求人件数が多いということを、サラリーマン時代の経験から知っていました。
世の中、まだまだ不況の続くなかで、ページのほとんどが理美容業で占められていたのです。
そう、前述しました空前の美容ブームが到来していたのです。
どん底からの復活
この好況を何とか利用できないだろうか・・・
ふと、以前、仕事を効率化するために自分でつくった、顧客管理ソフトを思い出しました。
それは、かなり力を入れてつくったもので、便利な機能を充実させた自信作でもありました。
このソフトを、理美容サロン用にカスタマイズして、一件一件オーダーメイドでつくってみてはどうだろう・・・、と思い立ったのです。
これが、見事に当たりました。
DMを出せば電話が鳴り、営業に行くと紹介をいただけるほど、斬新で画期的なものとして受け入れられました。
対象を理美容業に特化したこのソフトの販売で、最悪だった経営状態を一転させ、一気に安定軌道に乗せることができたのです。
独立から、4年が経とうとする頃です。
これをきっかけに、多くのサロン経営者や業界関係者とのつながりが生まれ、拡がっていきました。
そして次第に、いろいろな相談を持ちかけられるようになりました。
「スタッフにどうもヤル気が出なくて・・・」
「お客様のリピート率が悪くて・・・」
「もっと売上げを伸ばしたいんだけど・・・」
人材教育やマネージメント、営業戦略に関しては、サラリーマン時代の経験から、少なからず知識はありました。
それを基に、私なりの解決策をいろいろとアドバイスしていきました。
すると次第に、「田畑さん、一度ウチの店を見てもらえませんか?」というお話をいただくようになりました。
しかしビジネスとしてお金をいただくには、まだまだ力不足であることを充分承知していました。
マーケティングやマネージメントなど、一から勉強し直しました。
多くのコンサルタントの講演やセミナー、そして交流会などにも積極的に参加しました。
こうして徐々に、私自身のコンサルティングイメージができ上がっていったのです。
感動マーケティングの誕生
習得したノウハウを、現場に持っていってクライアントに提供する。
最初はそんなことをやっていたのですが、一般的なノウハウを講義形式で実施するだけでは、なかなか思うような成果を出せない現実に直面しました。
みなさんは、ふむふむと真剣に聞いてくれます。
しかし、知識を共有するだけではダメだ。
もっと実践的なアドバイスができないだろうかと、いろいろと試行錯誤した末に出した結論は、、、
私自身がクライアントの一員になろう!その上で、一緒に問題を解決し、売上げを上げていこう!ということでした。
早速、クライアントサロンの終礼やミーティングに加わりました。
営業中のサロンに出向き、接客の様子を観たり、閉店後のレッスンモデルにもなりました。
もちろん、なかなか打ち解けてくれないスタッフもいました。
しかし、こちらの本気が伝わると、徐々に心を開き、いろいろなことを相談してくれるようになりました。
スタッフ一人ひとりと向き合い、それぞれの悩みや課題を浮き彫りにするのと同時に、サロン現場に携わる人たち特有の、ものの考え方や仕事のやり方、言葉などを肌で感じ、吸収していきました。
もちろん、私に対して、「先生」なんて呼び方はナシです。
このように、世間でいうコンサルタントのイメージとは程遠い、泥臭い取り組みでした。
仲間、パートナーとして、スタッフと同等の立場に立つと、今まで見えなかったさまざまなものが見えてきました。
良い部分も悪い部分も、すべて体験していくなかで、サロン現場に最も効果的な接客方法やマーケティングの方法があることも、実際に身体で理解できていったのです。
その方法を、クライアントサロンに取り入れていきました。
すると、どうでしょう。
サロンの売上げが、かつてないほどの数字に達していたのです。
この方法は間違っていない!・・・そう私は確信を持ちました。
こうして、私自身のビジネス経験とサロン現場での実践を通して辿り着いた、独自のコンサルティングコンセプトができ上がりました。
それを私は、「感動マーケティング」と名付けました。
今、私は、この「感動マーケティング」を一人でも多くのサロン経営者に伝え、その実践を通して得られる、豊かさや感動を共に分かち合えれば、、、と切に願っています。
この小冊子を手にしていただいているあなた。
あなたのサロンの繁盛を実現することこそが、私の使命(ミッション)なのです。
それでは、私の提唱する「感動マーケティング」を、深く理解していただくために、その本質について、お話ししたいと思います。
第3章 あなたの「想い」を「儲け」に変える
繁盛に必要な2つの経営姿勢
感動とは、「期待を超える体験」であることはすでに述べました。
予想しなかった、思いがけない気づきや発見をしたとき、人の心に「感動」という状態が生まれます。
お客様の「評価」が「期待」を上回ったとき、あなたはお客様に『感動』をもたらしたと言えるのです。
では、それを実際にサロン経営に落とし込んでみましょう。
以前から、世の中不況だ、景気が悪いと言われる中でも、とても繁盛しているお店がたくさん存在します。
「行列のできる○○」とか、雑誌やテレビなどでもよく紹介されているでしょ。
そんな人気店とそうでないお店。
・・・その違いはどこにあるのでしょう。
私の見るところ、成長を続ける会社や繁盛しているお店の経営者には2つの共通する点があります。
それは、「お客様のお役に立ちたいという強い信念がある」ということ。そしてもうひとつは、「スタッフの成長を心から望み応援している」ということです。
どうでしょうか?
「そんな当たり前のこと!」とおっしゃるあなた。
では、一つひとつ検証してみましょう。
その1、お客様のお役に立ちたいという強い信念があるか?
「あるに決まってるじゃないか!」という声が聞こえてきそうですね。
でも現実には、そのことが現場で見受けられないことが多いのです。
ハッキリ言うと、考え方の方向性が、「どうやったら儲かるか、売上が上がるか」ということに傾いていないかということです。
たとえば、新商品のシャンプーが入ると、AさんにもBさんにも、C君にも、すべてのお客様に「これはおすすめ! 今なら○○%オフ!」と言って、売り込みをする。
AさんとBさんとC君は、髪質や髪の状態、それぞれの悩みも異なるというのに、個々のお客様の想いを推し測ることなく、商品を売ることだけに集中してしまう。
これでは、「わたしのこと何も知らないのに、商品を押し付けられてばかり。わたしのこと大切に考えてくれていないのね・・・」と、お客様は感じてしまいます。
「お客様のお役に立つ」というのは、お客様のことを知ろうと努め、深く理解し、思いやりを持って接する。
そして商品やサービスを通して、自分はお客様に何ができるかを常に考えるということです。
そうすることでお客様は、「わたしのこと、こんな細かなところまで大事に思ってくれているのね」と実感し、そこで小さな感動を体験できるのです。
その2、スタッフの成長を心から望み応援しているか?
成長とは自己実現のプロセスです。
「スタッフの成長を応援する」というのは、まずは、一人ひとりがどんな夢や目標を持っているのかを知る。
その上で、自分はスタッフ一人ひとりに何ができるのかをしっかり考え、その実現に向け支援するということです。
あなたは、スタッフ一人ひとりの夢や目標をご存知ですか?
まさか、スタッフを「稼ぐための道具」などと思っている経営者はいらっしゃらないでしょうが。。。
この自己実現については、後半でさらに詳しくお話ししたいと思います。
「儲け」のメカニズム
さて、この2つの条件を経営者が備えることで、組織にどのようなことが起こるのでしょうか。
心理学で、「返報性の原理」というものがあります。
「人は自分のために何かをしてもらうと、必ずお礼の行動をしなければならないと考える」というものです。
人の脳には、そういうメカニズムがあって、何か自分にいいことをしてくれたら、相手にいいことでお返しをする。必ずする!
これは、年齢や性別、地域性など関係なく、すべての人が持っている習性なのです。
では、この原理を先ほどの繁盛に必要な2つの経営姿勢に当てはめてみましょう。
感動をもたらされたお客様は、あなたのサロンのファンになります。
自己実現を後押しされたスタッフは、あなたを応援してくれます。
いかがですか?
あなたの理想とするサロンの姿ではないでしょうか。
お客様もスタッフも一緒。
あなたが、彼ら彼女らの役に立った分だけ、彼ら彼女らはあなたにお返しをしたいと思うのです。
この原理に基づいて、あなたのサロン独自のビジネススタイルを構築する。
それが、「感動マーケティング」の実体なのです。
感動マーケティングの流れ(経営フレーム)
まずは、下記の図をご覧下さい。
この、コマのような図は、「感動マーケティング」の流れ(経営フレーム)を表したものです。
コマの軸になっている部分が、「目的」です。
そして上から、「目標」「戦略」「計画」「管理」「業務」となっています。
「あれ?『目的』と『目標』って、どう違うの?」
そう、実はそこが重要なところなのです。
目的と目標
では、質問です。
「あなたのビジネスの目標は?」と訊かれたら、あなたはどのように答えるでしょうか?
「まずは、月の売上げを500万円にすること」とか、「3年以内に2店舗増やして5店舗にすること」とか、「50歳でハサミを置いてスタッフに店を任せること」、、、などというような答えが、すぐに返ってくるのではないでしょうか。
では、次の質問です。
「あなたのビジネスの目的は何ですか?」
「う~ん、それはね・・・、好きな仕事で家族を養って、みんながいい暮らしをすることかな・・・」というような、あまりハッキリとしない、そして結局、自分がいかに稼げるかという答えになるのでは。。。
ここで、下記の図を見て下さい。「目的」と「目標」の違いを記しました。
違いを簡単に説明すると、、、
『目標』は、「事実」であり「達成するもの」。「モノや量」で表わされ、道しるべであり「通過点」です。
一方、『目的』は、「価値」であり「追求するもの」。「心や質」で表わされ、目指す理想の姿であり「ゴール」です。
先の図に表したコマは、『目的』を軸になめらかに回り続けます。
ところが、軸がなければ回らない。軸がブレると倒れてしまう。
経営は、羅針盤を失った船のように大海原で迷子になってしまうのです。
実は、私もそうでした。
若い頃は、「社長になること」を目標に独立し、「ビッグで金持ち」になるために頑張っていたのですが、「あなたのビジネスの目的は?」と訊かれても答えられなかったでしょう。
今になって思うと、あの頃に、この経営の『目的』というものを深く考えていたら、何年もの間、つらい回り道をしなくてもよかったのかも知れません。
当時は目の前の数字に一喜一憂し、自分がビジネスを通して何を追い求めているのか?というような、目に見えないもののことは考えもできなかったのです。
繰り返しますが、、、
感動マーケティングに取り組む組織では、高く鮮明に掲げた「目的」を追求しながら、その通過点として置いた「目標」を一つずつ達成していく。
そして経営の目的は、一人でも多くのお客様を獲得し、継続して取り引きしてもらえる状況をつくりあげることができるか。
さらに踏み込んで言うと、その状況をつくるために、「あなたの商品やサービスを通して、お客様にどんなお役立ちができるのか、どんな魅力的な価値が提供できるのか」ということが何より重要です。
あなたにしか生み出せない独自の魅力をお客様に伝える。
それこそが、あなた自身の『経営の目的(=ミッション)』なのです。
目標前提から目的前提の経営へ
目に見えるモノや数字だけを追いかけ、そのことに一喜一憂するのは『目標前提』の経営です。
これは、「心の満足」を求めているお客様には受け入れにくいものです。
いわば、自分中心の経営。
先に述べた、同じ一つのシャンプーをAさんにもBさんにも、C君にも売りつけてしまうことになるのです。
『目標前提』の経営では、お客様の財布にフォーカスし、あなた自身の儲けが最優先。
ですから、即効性のある安売りキャンペーンに頼ってしまうのも無理はありません。
でも、お客様は値段の高い安いではなく、もっとメンタルな部分、「心の満足」に価値を置いているのです。
やがてお客様に見切られ、さらに売上げが下がる・・・、といった悪夢のようなマイナスのスパイラルに落ち込んでしまいます。
一方、『目的前提』の経営は、というと、、、
お客様の心にフォーカスし、お役に立つことが目指すところなわけですから、お客様に喜ばれ、感謝されます。
あなたも、スタッフも、そのことが何よりも嬉しいはずです。
仕事にヤリガイを感じ、ドンドン上向きになり、将来に希望が持てるのです。
いかがですか?
経営を、『目標前提』から『目的前提』に転換することの重要性がお分かりいただけたでしょうか。
「感動マーケティング」とは、あなたのミッション(使命)を通じて、お客様から多くの感謝を集める活動です。
あなたの「想い」を「儲け」に変える方法なのです。
では、これから、その「感動マーケティング」の具体的な実践方法について、解説していきたいと思います。
第4章 感動マーケティングの実践
感動マーケティングの実践には、3つの大きなテーマがあります。
その1つ目は、「組織のブランド化」。
そして2つ目は、「スタッフの活性化」。
そして3つ目は、「お客様のファン化」です。
この3つは、サロン経営をビジネスとして成功させる「感動マーケティング」の核となるコンセプトです。
これにより、繁盛の仕組みをつくりあげ、経営のフレームを強化していきます。
では、一つひとつ順を追って説明していきましょう。
組織のブランド化
ブランドという言葉を耳にすると、ついつい頭に浮かんでくるのが、有名ファッションブランドの名前ではないでしょうか。
シャネル、グッチ、ヴィトン、エルメス、、、
「(組織のブランド化?)えーっ、そんなの無理!ウチはごく普通の美容室なんだから・・・」とおっしゃるあなた。
ちょっと慌てないで聞いて下さい。
では、ブランド化を「個性化」と言い換えたらどうでしょうか。
あなたのサロンだけが持つ、「らしさ」「ならでは」の魅力を具体的に表現するのです。
あれ?と思われたあなた。
そう。これはつまり、先に述べた「ミッション(使命)」。
その構築と追及です。
ですから、サロンを海外のセレブブランドのようにリッチで優雅な雰囲気にしてしまいましょう、というのでは決してなく、「ブランド化」とは、独自の個性・魅力を見つけ、誇りやこだわりを持って育てていきましょう、ということです。
違う言い方をすると、他との圧倒的な違いを明確にし、広くお客様に伝えていくことです。
「ブランド」は、お客様の心の中に存在します。
あなたのサロンに対する価値として、記憶の奥底に刻み込まれ、呼び起されるのを待っているのです。
たとえば、あなたのサロンのミッションが「髪の健康を追求する」ということであれば、、、
「髪の傷みがひどくって、おさまりが悪いなあ。困ったなあ・・・」と、お客様が思った瞬間、「そうだ!あのサロンに行ってみよう。あそこなら何とかしてくれそうだ」と、記憶が呼び起こされ、そしてやって来るのです。
今、街には、多くの美容サロンが所狭しと存在しています。
あなたのサロンは、その中でひときわ際立ち、お客様に選んでいただける存在にならなければいけません。
どこにでもある美容サロンの一つではない、「このサロンでなければ・・・」とお客様に思ってもらえる強烈な個性を持たなければ生き残れないのです。
あなたのサロンの個性・魅力、、、必ずあるはずです。
ミッション(サロンの存在意義や価値)を明確にし、お客様に宣言する。
そして一貫性のある姿勢でお客様の期待に応え続ける。
ブランドは、こうして大きく育っていくのです。
ミッションの持つパワー、そしてサロン現場で生み出されるさまざまな成果については、第5章で具体的にご紹介します。
スタッフの活性化
2つ目のテーマは、「スタッフの活性化」です。
といっても、これは別に、お客様に元気に接しましょうとか、大きな声で挨拶をしましょう、という意味合いのものではありません。
せっかくサロンのミッションを構築しても、それが経営者の頭の中にあるだけなら、スタッフは何をしていいか分かりません。
「もっと、頑張れ頑張れ!」と言われても、何をどう頑張ったらいいのか、が分からないのです。
次第に、「言われたからする。怒られるからする」というような、沈滞した状態になってしまいます。
ひょっとしたら、あなたにも身に覚えがあるのではないでしょうか。
大切なことは、経営者の考えを明確にスタッフに示し、それを全員が理解し、分かち合うこと。
つまり、「ミッションを共有する」ということです。
サロンのミッションが決まり、それが共有できたら、次にそれを「スタッフ個々の目標と役割」に落とし込みます。
このことが、「スタッフの活性化」を促すのです。
では、その具体的な取り組みをお話ししましょう。
まずは、スタッフ全員に自分の夢や目標を明確にしてもらいます。
1年後、3年後、将来、、、自分はどうなっていたいかをイメージし、言葉にしてもらうんです。
そしてそれができると、その夢や目標の実現に向けて、自分は何をすればいいのかを考えてもらいます。
その際、大切なポイントは、「記録(実績)更新を狙うこと」「具体的にすること」「期限を明確にすること」「実現したい理由を明確にすること」、そして「チームで共有すること」です。
もちろん、これらのことすべてにおいて、個々のスタッフが自らの意思で行っていきます。
あとは、1年先、6か月先、1か月先、、、に定めた目標を、具体的な行動計画に沿って、それぞれが頑張っていくだけです。
こんなことで、本当にスタッフのヤル気がでるの?と首をひねられたあなた。
もう少し私の話にお付き合い下さい。
これからお話しするのは、私のクライアントサロンでの実例です。
あるサロンの新人スタッフMさんは、レッスン嫌い。
挨拶の声も小さいし、売上げも上がらない、経営者Kさんの悩みの種でした。
経営者Kさんは、「レッスンをしなさい!しなさい!」としきりに尻を叩くのですが、なかなか思うように動いてくれません。
2人の関係もギクシャク。
このようなときに私のコンサルティングが始まりました。
前述したプロセスに沿って、スタッフ全員でミッションを構築しました。
そして、Mさんも、自主的に自分の夢や目標を設定しました。
それから6か月後。。。
Mさんは変身していました。
休みの日にも店に出てきて自らレッスンし、営業チラシを周辺のお宅にポスティングに回るなど、6か月前では考えられないほど、意欲的で頼もしいスタッフへと様変わりしていたのです。
変身の理由は簡単です。
経営者Kさんが、イライラしてMさんの尻を叩いていたのは、目の前のことしか見えない「目標前提」の考えによるものでした。
ただ単に、「レッスンをするかしないか(してもらわないと店が回らない、売上げが上がらない)」だけにとらわれ、当然Mさんも、その中での葛藤に、気持の焦点が合ってしまっていたのです。
スタッフ全員で共有できるサロンのミッションを掲げ、それぞれのやるべきことを明確にし、そこに視点を転じてからのMさんは、常に自分自身の夢や目標を意識するようになりました。
「1日でも早くデビューして、お客様に喜んでもらえるようになりたい!」というのが、Mさんの夢でした。
そのための行動も、1年後のデビューに向けて「○○名のモデルレッスン」、「今月はウィッグで○回」そして「○月○日にテスト」など、緻密に計画を立てました。
当然、やるべきことが山のように出てきます。
とても時間が足りません。
必然的に、休みの日でも出てきて、自らレッスンをするようになりました。
それは、以前のように経営者Kさんからの押し付けではなく、自分が決めた夢の実現へのプロセスなのですから、一向に苦にならないのです。
Mさんにとってのレッスンは、単なる手段となりました。
その向こうにある夢をつかむために、クリアしていくべき通過点の一つになったのです。
どうでしょうか。
あなたのサロンでこのプロセスを実施したとき、どんな成果が生まれそうですか?
具体的な夢や展望もなく、ただ朝になったらサロンに来る。終わったら帰る。
やれと言われたことをするだけのスタッフは、ある意味かわいそうです。
自分はどうなりたいのか!?何が自分にとっての幸せなのか!?という人生の目的を、未だ見つけられないでいるのですから。
ここまで、「スタッフの活性化」について長々とお話ししましたが、次が最後のテーマです。
お客様のファン化
あなたのサロンに、どれだけのファンがいますか?
下記の図をご覧下さい。
ひと口にお客様と言っても、さまざまなお客様が存在します。
お客様とあなたのサロンの関係性に応じて、潜在客からファン客へと進化していきます。
ファンとは、お客様ヒエラルキーの中で最高位に位置する存在で、あなたのサロンに対する「信頼と愛情の証」なのです。
では、なぜファン化が必要なのかをお話ししましょう。
一つは、新規客を獲得するコストよりも、既存客を維持するコストのほうが圧倒的に小さいからです。
「釣った魚に餌をやらない」という言葉に象徴されるように、たとえば、付き合うまでは高級フランス料理やイタ飯だったデートが付き合ったとたん安い居酒屋に。。。(笑)なんて、よくある話ですが、これも獲得コストと維持コストの関係ですね。
もう一つは、ほんの一握りの優良なお客様によって、売上げのほとんどがつくられているからです。
業務形態によって多少の前後はしますが、一般的な美容室の場合、上位20%のお客様のもたらす売上げが、全体の50%を占めているのです。
これらのことからも、安定した売上げをキープするためには、ファン化が欠かせません。
さらに言うと、お客様をファン化することによって、サロンの失客率は下がり、再来店率は上がる、紹介率も上がり、セールスは増大するのです。
そして、何よりお客様から喜ばれ、愛され、必要とされます。
スタッフのヤル気やヤリガイが向上し、サロンに多大な成果をもたらすのです。
まさに、言うことなし!ではありませんか。
では、一人でも多くのお客様に、あなたのサロンのファンになっていただくためには、どうすればいいのでしょうか!?
それには2つの重要な取り組みがあります。
一つは、「お客様の情報量を増やす」ことです。
お客様を知れば知るほど、お役に立てるチャンスが広がります。
お客様の願望を最大限に叶え、多くの感動をもたらすのです。
カウンセリングの場面で、雑談のなかで、あるいはお客様の動きに気を配りながらさまざまな固有の情報をインプットするのです。
そして朝礼や終礼、ミーティング、カルテなどを通してその情報をサロン全体で共有し、スタッフ全員が活かしていくことが重要です。
もう一つは、「お客様との接触頻度を高く維持する」ことです。
接触しなければ忘れられる。
これは当然のことです。
「去る者は日々に疎し」と言いますが、人間の記憶は時間の経過とともに低下し、親しみが薄くなってしまいます。
お客様の記憶を常に呼び起こし、気持をこちらに引きつけておくための工夫が必要です。
ご来店後は、すぐにお礼のハガキを出したり、毎月ニューズレターを配ったり、イベントを開催したり、ホームページやブログでサロンのさまざまな情報を常時配信したりするのもいいですね。
お客様のファン化を促進させる取り組みにおいて大切なことは、決して小手先のサービスではなく、あくまでもミッションを追求する強い信念こそが、お客様との信頼関係を深化させ、末永くお付き合いしていくための原動力になるということをお忘れなく。
ここまで、私の提唱する「感動マーケティング」について、その概要をお話ししてきました。
次は、この「感動マーケティング」の実践を通して、実際のコンサルティング事例のいくつかをご紹介しようと思います。
第5章 ゾクゾク生まれるサロンの成果
「感動マーケティング」の実践を通して、これまで多くの繁盛サロンが誕生しました。
もちろん、経営者をはじめ、スタッフ一人ひとりの努力あってのことです。
これからご紹介するサロンは、クライアントサロンの中でも規模が小さな美容室です。
そんなごく普通の美容室が、ゆるぎない繁盛を実現する過程の中で、大きな成果をもたらす原動力となったそれぞれの「ミッション」に焦点を当て、サロン現場の生の声をお届けしたいと思います。
<事例1> ミッション「楽しむ・楽しませる」
40歳を過ぎたばかりの女性経営者Kさんが率いる下町のサロンは、安定した売上げを上げておられ、特に問題はないように思えました。
ところが、お目にかかって雑談をするうちに、経営者の「仕事魂」に火が点いたようで、「もう一度、昔のように夢を持って事業を大きくしたい!田畑さん、手伝って欲しい」という申し入れを受けました。
いつものように、サロンに仲間として入らせていただき、お手伝いが始まりました。
2~3か月かけ、何度も繰り返しスタッフ全員で話し合いを重ねた結果、でき上がったミッションは、「私たちは『楽しさ』を通じ、お客様と心を共有し、真の豊かさを目指します」というものでした。
「楽しむ、楽しませる」ことを自分たちの「使命」として、仕事に取り組んでいくことをスタッフ全員で約束し合いました。
毎日の朝礼で、ミッションをスタッフ全員で唱和することにしました。
終礼では、今日ご来店された一人ひとりのお客様に対し、もっと楽しんでいただくことはできなかったのか、次回のご来店時にはどう楽しんでいただこうか、とミーティングを重ねていきました。
ちょっと聞くと大変そうに思われるかもしれませんが、スタッフたちは、自分たちの目指すゴールがハッキリしたので、そこに向かうためにはどうしたらいいか!?と首をひねり、考えることを楽しみながら一日一日を過ごしていたようです。
それからしばらくして、ある日のミーティングで、一人のスタッフがこう言いました。
「以前は、自分の売上げを上げるためにはどうすればいいだろう・・・、ということばかりを考えていて、仕事をしていたんです。でも最近は、お客様に楽しんでいただくにはどうすればいいのか!?と考えるようになりました。仕事に対する考えがすごく変わりました」と。
また別のスタッフは、「売上げが悪いのは、お客様に楽しんで欲しいという、私たちの想いが足りないからだと思います。だから、それがしっかりできているか、もっとできることはないか、っていつも考えるようになりました」と。
サロンの雰囲気やお客様の様子はみるみる変わりました。
店内は、明るく笑顔で満ちています。
お客様からの「ありがとう」の言葉が、頑張る自分たちへの最高のご褒美であると実感を得たのです。
売上げも徐々に上がっていき、ミッション構築してから6か月後、ひと月200万円強だった売上げが、ほぼ倍の397万円にまで達したのです。
その後も、対前年実績の130%を超える売上げで推移しています。
スタッフ全員が口を揃えて「仕事が楽しい!」と言い、経営者Kさんは、「少し優しくなった気がする・・・」と。
これらのことも、相手のために何ができるか、を追求している成果ではないでしょうか。
<事例2> ミッション「・・・(お店の存続)」
月の売上げが90万円を割り込み、ジリ貧状態の支店を抱えるサロン経営Hさんから、「閉店の是非を検討したい」との依頼を受け、出向きました。
支店は、スタイリストとジュニアスタイリストの若い女性2人だけで頑張っているサロンです。
サロンの今後について時間をかけて話し合いました。
その結果、2人から、「頑張ってお店を残したい!」という言葉を聞くことができました。
ならば、ミッションは「お店の存続」しかありません。
売上げの目標は、1か月目から130万円と定めました。
限られた時間の中ですので、私の方からいくつか提案をしました。
売上=来客数×客単価 で決まりますので、とにかく客数と単価をアップさせること以外にありません。
まず、客数については、「お客様を逃さない」ということでした。
これまでは、どちらかに指名が重なったり、どちらの手もふさがっている状況だと、新たな予約や飛び込みのお客様をお断りしていたようです。
これはもったいないですから、もし2人に指名が重なったら、当人の指示のもとで、もうひとりが担当できるようお客様にお願いをしたり、状況によっては、営業時間を延ばしてでも、その日のお客様すべてを、逃さず対応することに努めました。
単価については、「いかにお客様に気づきをもたらすか」ということに集中しました。
人は、悩みや苦痛から逃れるときに強く反応するという習性があります。
お客様の髪の悩みを少しでも多く聞きだし、一つひとつの解決策を提案するのです。
「今のスタイルや普段のお手入れでお悩みの点はないですか?」と訊き、プロの観点からアドバイスをしていきます。
お客様は、「わたしのためを思って言ってくれている」と納得できれば、喜んでそれに応じていただけるはずです。
このように、スタッフ2人と私の3人で、怒涛の1か月を過ごしました。
2人は、ろくに食事もとれなかったようです。
そして結果は、、、
見事!目標の130万円を超え、138万円を達成しました。
客単価も、目標だった8,500円を上回る8,750円に!!
スタッフは、こう言います。
「仕事やお客様に対する意識が上がり、それを行動に出せた結果だと思います。お客様に、自分たちの気持ちが少しは通じたのかな、と思いました」と。
こうして、「お店の存続」に成功しました。
そしてこのあと、組織全体で「感動マーケティング」に取り組み、業務の改善を果たしていったのです。
<事例3> ミッション「地域に愛され必要とされる」
広告宣伝費を一切かけずに、新規増客130%という事例もあります。
こんな魔法のようなことができるのか、とお疑いでは!?
このサロンのミッションは、「お客様に喜んでいただき、地域に愛され必要とされるサロンを目指します」と決めました。
その実現に向けてスタッフたちは、
- 店頭にメッセージボードを置き、毎日自分たちの想いを書く。
- 店の周辺道路まで、掃除を徹底する。
- サロンの外でも、顔見知りの人には明るく元気に挨拶をする。
- 毎月、誕生月のお客様全員(過去に一度でも来店された実績のある人すべて)の名前を貼り出しお祝いする。
・・・など、地域の方々に、愛され必要とされるための工夫を凝らし始めました。
もちろん、結果はすぐには出ません。
しかし、スタッフみんなの表情は明るくなり、サロン全体に活気が生まれました。
ほんの少しですが、立ち止まってボードを読んでくれたり、貼り出してある名前に興味を持って見てくれたり、挨拶をしてくれる人も増えました。
そうなるとスタッフたちも、「お客様に喜んでもらうことが、一番嬉しい!楽しい!」と口にするようになり、接客の様子も自然と変わっていきました。
次第に、挨拶だけだった地域の人が、ひとり、またひとりとサロンに来てくれるようになりました。
こうして3か月が過ぎたある日のミーティングで、業績を見ると、、、
なんと!新規の客数が、これまでの月平均に対し130%アップしていたのです。
スタッフみんなの想いがお客様を呼び寄せることとなりました。
「地域の方々のお役に立ちたい!」と一生懸命に取り組む姿に、お客様は尊さを感じ、「応援したい!」という気持ちとなってご来店に結びついたのでしょう。
サロンスタッフの生の声
目標達成者コメントのほんの一部をご紹介します。
◆ お客様とのコミュニケーションが密になってきてるのでは?考え方は、技術も大切ですが、そればかりに頼りすぎず、自分らしくお客様とお付き合いすること。人と人とのつながりを大切にすることが、よりお客様を知ることになっていると思う。お客様とメールやDMのやりとりをしたり、家族・ご近所といったその方の関わる仲間の間で、共通の話題として自分やサロンでのことを取り上げてもらっているようで、そういうことがお客様の再来につながっていると思う。(K.T/男性スタイリスト)
◆ 私が美容師になって、初めての売上げでした。全然数字の意識はしてなくて、アプローチの数を意識してたので、売上げにつながったのだと再確認できました。忙しくなってきても、何とかやりこなせているので、少しずつですが、成長しているんだな、と気づけたことが一番よかったと思っています。(K.H/女性スタイリスト)
◆ お客様の髪の状態だと何が必要かをまず考えて、お客様に「こういうことで悩まれていませんか?」など、問いかけていった。自分が商品を使うときには、それを使う意味、どういう感じに仕上げるかも伝えていった。目標というものがどこかに強くあって、でもそれだけではなくて、本当に必要なものを購入して使っていただきたい、実感していただきたい、という思いでした。達成した!ということよりも、聞いて伝えていくことで、ヘアーのことだけではなく、お客様のこともいろいろ分かった。(E.O/女性アシスタント)
◆ 自分でもできるんや!と思う、自信がついた。今まで意識してなかったアプローチ(プレゼント)を意識し始めることで、いつもの流れのコミュニケーションじゃなく、今までとは違うお客様の悩みやスタイルチェンジなどを聞き出せて、無理なく自然にプレゼントができてきたと思います。プレゼントということが自分の中でよく理解できた気がしました。(S.I/男性スタイリスト)
◆ いつも必要以上に商品の説明をしたり、すすめていたりしていたと思うけど、今月は、田畑先生に「説明をしないように!」と言っていただいたのもあって、そのお客様が本当に何を欲しがっておられたり、悩みをなくすために、何が必要かをよく考えてアプローチできたと思う。自分の中で行き過ぎてしまうところを抑えられるようになった。商品の説明から入ることがなくなった。お客様を今まで以上に知ることができたと思う。数字ばかりを特別意識していたわけでなく、お客様のことを考えてやっていると自然と上がったように思う。「達成=お客様の心」のような気がします。喜び・感動・自分の存在価値など感じることができました。(F.T/女性アシスタント)
◆ このお客様には、絶対にこれを使って欲しいと思い、本気でお話しをしました。自分のことを知ってもらい、お客様のことを知りたいという気持ちで会話をして、信頼をしてもらい、結果につながったのかな、と思っています。自分の意識しだいで、お客様との距離が近づいたと思う。目標を立てると、それに対して考え、意識するので、自分自身の成長にもつながっていると思います。達成できると自信にもつながる。(Y.M/男性アシスタント)
◆ 本当にそのお客様に必要だと思う商品をおすすめしました。お客様の喜びを考えておすすめすると、その気持ちは通じるのだと実感しました。これからは、目標設定をもう少し高くして、どんどん喜びの数を増やしていきたいと思います。(N.H/入社6か月・女性)
おわりに
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
長々とお話ししてきましたが、私の提唱する「感動マーケティング」とは、、、
ズバリ!「ミッションに基づくファンづくり」です。
「ミッション」とは、あなたがどのようにお客様のお役に立ちたいと考えているのかという、ビジネスにおけるすべての源となるもの。
つまり、あなたの「使命」です。
また、「ファン」とは、あなたの考え方に共感し、熱狂的に応援していただけるお客様、いや、関わるすべての人です。
経営者の「想い(=使命感)」をスタッフ、お客様へと広く伝え、自らのビジネスに関わるすべての人をファン化していく活動です。
池に小石を投げ込んだとき、水の中に飛び込んだ小石を中心に、波動が内から外へと拡がっていきますよね。
・・・そんなイメージです。
あなたの「使命感」の波動がどこまで拡がるかによって、ビジネスの「儲け」が決まる(=あなたの「想い」を「儲け」に変える)のです。
ほんの少しの気づきと行動が、あなたのサロンの現状を大きく変えることでしょう。
さあ、力強く最初の一歩を踏み出しましょう!!
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
「感動マーケティング」の実践を通して、あなたの人生に豊かさとサロンに繁盛がもたらされますことを、心よりお祈りしています。
2006年1月吉日
美容室経営コンサルタント/感動マーケッター
田畑 博継
2006年1月 初版発行
2017年6月 改訂版発行
著者 田畑博継©2006-2017 Hirotsugu Tabata All Rights Reserved.
今後とも、これまで同様「美容室経営のバイブル」として、末永くご愛読いただければ幸いです。
最後に、あなたにお願いがあります。
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